1ページ読書実践編第三頁:有島武郎『或る女』

僕があなたに始めてお目にかかったのは、この夏あなたが木村君と一緒に八幡に避暑をしておられた時ですから、あなたについては僕は、なんにも知らないといっていいくらいです。僕は第一一般的に女というものについてなんにも知りません。しかし少しでもあなたを知っただけの心持ちからいうと、女の人というものは僕に取っては不思議なです。あなたはどこまで行ったら行きづまると思っているんです。あなたはすでに木村君で行きづまっている人なんだと僕には思われるのです。結婚を承諾した以上はその良人に行きづまるのが女の人の当然な道ではないでしょうか。木村君で行きづまってください。木村君にあなたを全部与えてください。木村君の親友としてこれが僕の願いです。

有島武郎『或る女』より引用

有島武郎『或る女』を読んでみよう!

今回は、有島武郎の『或る女』を読んでいこうと思います。

僕はこの小説を読んだことがありません。また、有島武郎に関する事前情報もほとんどないです。
高校受験か何かで、志賀直哉、武者小路実篤などと刊行していた『白樺』の主要メンバーであるということくらいでしょうか。この二人に関しては、本を何冊か読んだことがありますが、この方に関しては本当にありません。

いつかは触れてみようという作家だったので、1ページ読書を終えたら最初から読んでみようと思います。とりあえず今回は、適当に抜粋してきました。

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とりあえず、読んでみる。

見渡してみると、よく知らない単語はほとんどありません(知っているかもわかりませんが)。
だから今回は、とりあえず一読してみました。

この文章は1文字下げを行っていたので、手紙の一節であることが伺えます。だからなのか、文章構成は全体的にわかりやすい。
登場人物は、「僕」と「あなた」、そして「僕」の親友であって「あなた」の良人である「木村君」だと分かります。

「行きづまる」ってなに?

ただ、一語だけよく意味が分かりませんでした。「行きづまる」と言う動詞です。行きづまるとは一体どういう意味なのでしょうか。

「あなたはどこまで行ったら行きづまると思っているんです」

「あなたはすでに木村君で行きづまっている人なんだと僕には思われるのです」

「結婚を承諾した以上はその良人行きづまるのが女の人の当然な道ではないでしょうか」

「木村君で行きづまってください」

どうやら、「木村君で行きづまる」ということがあり得るっぽいですね。木村君と結婚したから、木村君で行きづまるのは当たり前の道。
やや早計かもしれませんが、「行きづまる」とは「恋をする」と言う意味なのかもしれません。

木村君の親友である「僕」が、「木村君に恋をしてください」と言っているのであれば、相当木村君のことを大切に思っているのかもしれません。
それか、「僕」が実は「あなた」のことが好きで、どうしても諦められなくて、負け惜しみにこういうことを言っているのかもしれません。明治の小説家には結構そういう文章があります。

たとえば、武者小路実篤の『友情』の主人公である野島はそんなことを言っていたかもしれません。
失恋をすると、愛情は憎悪にすぐさま変わります。
この「僕」も、「行きづまる」というちょっとしたネガティヴなニュアンスのこもった単語を選んでいるのもそういったわけかもしれません。正直何にも分かりません。

行きづまるという表現

正直、本当に唐突な部分を抜粋しているので、きっと「行きづまる」の本当の意味はこれだけでは永遠にわからないでしょう。
ただ、「行きづまる」を「恋をする」だとするならば、結構味のある表現だなあと思います。

「恋」はある日突然、思春期にやってきます。多くの人が受験をしている最中だったりして、本当に勉強に支障をきたします。
英語とか国語とか、本当に面倒くさい。集中しなきゃ解けないはずなのに、あの子のことばかり考えてしまう。
なるほど、完全に「行きづまって」います。「恋をする」と「行きづまる」のです。

「恋」が人生における「行きづまり」だったのなら、合点が行くことが多々あると思います。
恋人を持つと途端に付き合いが悪くなる友達が数多く存在しますが、彼は今まで歩いていた「人生」という道に行きづまっている。
だから、彼は「人生」において必要不可欠であった「交友関係」にも行きづまらざるを得ないのです。

考えたら恋は人生との両立が非常に測りにくい。「仕事」「友達」「家族」「趣味」などといったことがしばしば「恋」と天秤にかけられ捨てられる。
「恋」は、しばしば進み過ぎる「人生」の急ブレーキの役割を果たしているのかもしれません。そういえば、「恋」とは楽しいものです。僕たちは、恋をして、時々休憩をしなければいけないのかもしれません。


『或る女』はどうでしたでしょうか。

謎はたくさんあります。「僕」の心情と、「行きづまる」の本当の意味、登場人物がどんなストーリーを作っていくのか……。
こう、1ページだけを、制限をかけて読むとその前のことや、続きが気になりすぎて仕方がありません。どうにも面白そうなページでしたので、これをきっかけに、みなさんも『或る女』を読んでみてはいかがでしょうか。

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